経常運転資金の調達方法

様々な企業の決算書を見ていると、資金の調達方法と資金運用のバランスがあまり良くないバランスシートを良く拝見します。特に多いのが経常運転資金の調達方法が適切でないケースです。


自身の企業に必要な経常運転資金はいくらか、認識をされているでしょうか。経常運転資金とは、言葉の通り「常に発生している立替資金」です。バランスシート上の売上債権、棚卸資産から仕入れ債務を差し引いて算出をしますが、この経常運転資金は事業を行っている以上常に必要であり、理論上売上が大きく減少したりしない限り減る事はありません。つまり、この経常運転資金を借入にて調達するのであれば、本来「借りっぱなし」とするべきものです。しかし、現実ではどうでしょうか。大部分の中小企業がこの経常運転資金部分を、月々返済を要する証書貸付(長期借入金)で調達しているケースが多数散見されます。


このような状況となっている原因はどちらかというと銀行サイドにあると思います。リーマンショック後、国は企業支援の為に、信用保証協会にて特別融資制度を設けました。そして銀行はこの保証協会融資制度を利用した融資を強力に推進し7年や10年の長期の証書貸付をどんどん行いました。結果として多くの企業で、本来証書貸付で借りるべきではない経常運転資金までを証書貸付で調達するといった事になってしまったのです。


 長期借入金での調達の返済原資はキャッシュフローです。本来は、長期間をかけて収益を生み出す固定資産に相当する部分の調達方法であり、キャッシュフローにより月々返済をしていくものです。ですが、固定資産部分のみならず経常運転資金部分まで長期借入金で調達してしまうと、月々の返済額がキャッシュフローよりも多くなってしまいます。そして、返済が進むにつれて現預金が減少し、多くの企業が「返済のための借入」を要したり、返済猶予(リスケ)に陥る事となってしまいました。


金融庁はこういった状況を問題視し、数年前から金融機関に対し『短期継続融資』の推進を求めるようになっています。これは経常運転資金部分を毎月返済する必要のない当座貸越(または手形貸付)にて対応し、事業が正常に継続されている限り原則融資は継続するものとなります。つまり、銀行が最も嫌がる「ベタ貸し」(債権の固定化)です。


従来当座貸越の対象先は上位優良企業に限られていましたが、通常の中小企業に対しても当座貸越を使った『短期継続融資』を行うように求めています。そして、銀行がそのリスクをカバーするのは不動産担保や預金担保前提ではなく、その企業の事業内容や事業の将来性、いわゆる『事業性評価』です。


このような流れによって、以前では中小企業にとってはハードルの高かった当座貸越契約を獲得できるチャンスとなっています。今まで、銀行に勧められるままに長期借入金に偏重した調達をしている企業様は、自身の企業のバランスシートを確認していただき、短期継続融資を活用した調達バランスの是正を検討してみる事をお勧めします。

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